列強興亡史 -great powers history-

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ロシア史戦間期編①(1920年~1924年)(執筆中)

内戦終結後のロシア(1920~24年)

ロシア内戦後の内政

 1920年3月モスクワ陥落後にケレンスキー首班のロシア臨時政府は臨時首都として再びペテルブルグに舞い戻った。ボリシェヴィキにより解散させられた憲法制定会議を復活させ旧ドゥーマで活動していた立憲民主党(カデット)、進歩党(トルドヴィキ)、社会革命党(エスエル)、中央党、十月党(オクチャブリスト)が会議に集結した。会議で急務とされた課題は国家再建、民主的政治制度に基づく国家統治体制の確立、農民及び労働者の生活立て直しの主にこの三つである。

憲法制定と民主的政治制度の確立

 憲制会議での約6カ月の討議の末に1920年9月にロシア共和国憲法が制定・公布された。憲法では国号をロシア共和国と定め、立法府、行政府、司法府の三権分立に基づく政治制度であるとした。国家元首は大統領、行政府長は首相、立法府長は下院の国民院議長と上院の元老院議長、司法府は共和国最高裁判所長官と定めた。

 立法府に関して下院議員は定数450議席任期4年の比例代表制に基づく国民投票によって選出される。上院議員は定数180議席任期6年であり上院議員選出は90議席は各州議会から非公選に基づく選出、残り90議席は旧帝国時代の貴族称号を有する者及び高額納税者から選出される。また立法府は条約批准権、国民院からの立法権を有する。

 行政府長の首相は国民院議員の総意に基づき選出される。国家元首たる大統領は国民投票による直接選挙で選挙権を持つ総人口の過半数を得て選出される。行政府長の首相は内政に関する行政権と議会招集・解散権及び国務大臣指名権を有し、国家元首の大統領は任期5年で内閣の外務大臣との協議に基づき国家を代表して外国との交渉と協定・条約締結等の外交権、有事の際は国軍最高指揮権を有し内閣の国防大臣及び陸海軍最高幕僚、内閣首相との協議に基づき相手国への宣戦布告及び休戦・講和交渉権を有すると明記された。

第1回国民院議員選挙及び第1回大統領選挙と元老院議員選出

 国民院選挙では社会革命党が圧倒的過半数を獲得し首相指名ではヴィクトル・チェルノフが初代首相に任命された。そして大統領選挙ではアレクサンドル・ケレンスキーが初代大統領に選出された。元老院選出では民選枠で社会党革命党が圧倒的過半数を獲得した。

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(左から)チェルノフ初代首相、ケレンスキー初代大統領
ロシア政党再編運動

1920年10月ロシア初の大統領及び国民院の民主選挙前で政党再編再定義運動が起こりトルドヴィキが社会革命党に復党し、10月党は進歩党及び他保守政党は統合し保守人民党を結成した。社会民主主義を掲げ労働者・農民階級の支持層を持つ社会革命党、自由主義的立場を主張し中間層含めた幅広い支持層を持つ立憲民主党、保守的立場を主張し貴族・地主・資本家階級の支持層に持つ保守人民党等の主にこの三大政党によって議会政治が行われた。選挙後に少数ではあるが元メンシェヴィキで構成された全体社会主義ロシア共産党、ドイツのシュトラッサー兄弟が提唱する国家社会主義思想に影響を受け結成された全ロシア国家社会主義労農党が政治活動を始めた。

ロシア経済

 1921年のロシア内戦終結後のロシアは国土は荒廃し焦土に近い状態であり、労働者と農民は食料不足と失業に悩まされていた。チェルノフ首相は早速これらの問題を解決すべく行動を始めた。英米仏独からの外国資本の呼び込み及び旧同盟国からの賠償金などで被害を受けた工場や鉄道施設の再建を行った。この政策により20年代半ばにロシアは国土復興が進み生産能力は大戦前の水準に回復した。農業政策では農産物不足を外国からの食糧及び農産物無償輸入で賄い、また政府は地主農民救済政策を実施しこれにより農産物の安定的供給を取り戻し食料不足は解消した。

ロシア外交

 ケレンスキー大統領は1921年2月に内戦終結後にベルリン協定を締結した関係各国と戦後処理の為にブレスト=リトフスクにて集結し会議を実施した。ロシア共和国、旧ロシア帝国支配地域民族独立勢力、英米独仏伊日の列強諸国は1921年4月にブレスト=リトフスク条約に署名した。条約内容は以下の通りである。

  1. 本条約はベルリン協定を発展的にした条約である事
  2. ロシア共和国は旧ロシア帝国の後継国家である事を本条約締結国は認める事
  3. ロシア共和国は旧ロシア帝国が締結した各種の協定・協約・条約を遵守する事
  4. ロシア共和国は旧ロシア帝国が列強諸国に負っていた債務返済を履行する事
  5. ロシア共和国は旧支配地域の独立国家であるポーランドベラルーシウクライナリトアニアリヴォニアフィンランドジョージアアゼルバイジャンアルメニアカザフスタントルキスタン、ブハラを独立国家として承認し国交関係を樹立させる事とこれらの国が定めた国境線を認める事
  6. WW1後に旧同盟国から獲得した領土であるボスポラス海峡及びダーダネルス海峡の放棄と両海峡地域の国際連盟による国際管理地域を認める事、小アジア東部のアルメニアへの継承と承認、北樺太の日本への割譲

ロシア共和国はブレスト=リトフスク条約を署名締結し議会で批准を経て承認され、こうしてロシアは戦後処理問題を解決した。ケレンスキー大統領は国際協調路線を打ち出し内戦によって棚上げにされていた国際連盟に加盟した。